特に期待せず観たら割と面白かった作品。トレイラーも観ないレベルに前情報を入れることなく観たのが良かったのかもしれません。
お話自体はそこまで独創的ではないかもしれないけれど主人公のポジションが特殊だったのでけっこう楽しめました。
お話のノリとしてはホラーとかサスペンスとかいうより児童書にありそうなネタだなあとか。別にラブロマンス要素とかはないけど、ところどころが主人公である高校生くらいの少女と同年代向けに作ってある感じがしたので海外ヤングアダルト系小説を読むのが趣味の人は楽しめるかもしれません。
以下全編に渡るネタバレが含まれます
まず冒頭は、主人公が毎日16歳の誕生日の前日を繰り返していることに気づく、というループ物を思わせる始まり方をします。ループ物は大抵「いかにしてループから抜け出して日常に戻るか」という目的に向けて進行していくのですが、この主人公はどうも自分たち家族は既に死んでいるのではないかという結論に達します。わりと序盤の方だったので主人公の思い込みで別にそういうわけじゃないオチがつくのかと思いきやマジで死んでいました。どおりで主人公の瞳孔が開きっぱなしだと思った……
某有名スパニッシュホラーならこの時点で衝撃のラストであり「ここがリンボでないならどこなんだろう……」とか言いながら完なのですが、このお話ではまだ結構な序盤なので、戻るべき日常はないものの舞台となる家には主人公の属する亡霊一家以外にも沢山の亡霊が家に憑いており、更に主人公の死(80年代)から数十年の時を経た「現在」の一家もまた危機にさらされていることが分かり、主人公は自分と同じように最期の一日を繰り返し続ける霊たちの救済と、自分に助けを求める「現在」の少女一家を助けるために、そして自分たちを殺した犯人に報復するために奔走することになります。
この「最期の一日を繰り返し続ける亡霊」っていうのはハウフの『隊商』にある幽霊船の話とかにも出てくるんですけど西洋の幽霊モノ界隈ではけっこう普通のことなんですかね。
犯人というのはどうも主人公の家の前の所有者であり、少年時代に両親を殺してその後もたくさんの少女たちを誘拐して殺し、死後もその家に住んだ人々をとりころして魂をコレクションしているようです。一家心中がおこったような築数十年の家を普通に売るなよ、買うなよ、と思わなくもないんですがとんでもないいわくつきの家が普通に売られているのがホラー映画フィールドなのでその辺はまあ仕方ないです。犯人の背景は断片的な映像などで示されるだけなのですが、それもまあ犯人について細部まで理解する必要はないからでしょう。何故自分の死後も魂コレクションができたのかとか微妙に謎ですがこのお話は幽霊少女が現代の少女を救うために奮闘するってところが重要な話なのでその辺もまた些細なことです。
何かしらの原因で現在と過去が繋がり、同じくらいの年ごろの子供たちが交流して、それで何かしら問題解決とか成長っていうのは先にも触れたとおり児童書で非常に多いネタです。古典では『トムは真夜中の庭で』とか、最近の作品では『チェンジリング・チャイルド』とか。ただ当然のことながら普通は感情移入しやすいように「現代」の子供を主人公にすることが多いです。死亡済みの80年代少女の視点で現代の少女を助けに行くというのはなかなか面白かったです。
主人公は家族全員が自分たちの死に気付いた時点で成仏することもできたはずなのに、他の魂や「現代」の少女を救うべく立ち上がる姿は無駄に英雄的でした。別にそこまで「現代」の少女と交流があったわけでもないのでその辺りの動機づけはちょっと弱かったような気もします。
自分たちはもう数十年前に死んでるんだから別に犯人を斃したところで生き返れるわけではないのですが、その色々詰んでる状態に絶望するよりも「もう死んでるからこれ以上何ともない」と清々しい開き直りかたで危険につっこんでいく主人公は素晴らしいです。
細かい疑問点は残りつつオチも割とハッピーエンドなので清々しくみられました。 この手のオチは割と宗教観の差によって意見が割れたりするのですが、この話はもうスタート地点から死んでるのでけっこうどういう立場から見てもハッピーエンドになるんじゃないかと思います。
演出次第でいくらでもつまらなくなりそうなお話なのに割と全編楽しめたのでけっこう上手い作品だと思います。
気になった点は
・ピーターと狼がすごい緊張感そいでくる
・主人公の服に顔がついてる
の二点です。
ピーターと狼はなんかわざとかなって気もするんですけど、主人公の服についてる顔がちょくちょくガラスに映り込んだり暗闇で浮いたりしてそこが無駄にホラーっぽいんであの服じゃないほうが良かったんじゃないかと思う次第です。なんか80年代に流行してた服だったりするんだろうか。
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