2014年7月6日日曜日

フリア よみがえり少女



 原題は『Dictado』で、これは作中でそこそこ重要な要素である「書き取り歌」の意。

ジャケットのアオリに『エスター』のタイトルが出ていて、確かに
「流産した夫婦が迎えた養子がなんか変でおかしなことに」
ってあたりはエスターっぽくもあります。 もう既に二人子供がいるのに結構大きい子供を赤ん坊の代わりにもらってくる『エスター』と比べれば、子供を望んでも得られない夫婦が自殺した知り合いの子を引き取る『フリア』のほうがわりと自然な導入な気もします。
 でも内容は『エスター』とは全然違う……というか概ね『ロスト・メモリー』です。 両方とも2012年の映画なのでどちらかがどちらかのパクリとかではなくて偶然被っただけだとは思いますが。



  以下、『フリア』『ロスト・メモリー』両方の核心部のネタバレを含みます














『フリア』と『ロスト・メモリー』はどちらもごく簡単に書くと、遊びの延長で少女殺しの罪を背負ってしまった二人の子供が成長し、当時の自分たちと同じくらいの年齢の子供ができるほどの年齢になった頃に、忘れようとしていた過去の罪を断罪される話です。
片方が先に始末されてもう片方が主人公だったり殺した相手が蘇ったかのような展開になったり殺害方法が穴に落とすだったり風呂に沈んだり風呂で手首切ったり色々とよく似ています。
大きく異なる点は主人公の性別(『フリア』は男性、『ロスト・メモリー』は女性)と、 「報復者」が誰であるかというところです。

主人公の性別は「母親」であるか否かくらいしか差はないと思います。
「報復者」については、明確な殺意を持った人物が糸を引いていた『ロスト・メモリー』と違い、偶然の連続によって過去が暴かれていく『フリア』は、結局のところ主人公が自分自身に追い詰められていった部分が大きいです。


 個人的に幼い頃の罪に苛まれて悶々とする主人公を見ているのはそんなに好きじゃないので、いっそのこと昔の罪のことを何も悪いとは思ってないくらい吹っ切れたサイコ野郎が主人公でも面白いんじゃないかと思うのですが、『フリア』の主人公は少しだけ開き直ったようなところもありながらサイコにもなりきれない中途半端な感じでそこがちょっと微妙でした。救済を求めるようなことを言い出すくらいなら最後は自分で身を投げるくらいしてほしかったです。


主人公が「父親になれない男性」なので見ている間はあまりそんな感じがしなかったのですが、物語を動かしている要素は結局のところ「母子の愛」によるところが大きいので、主人公ともう一人の少年を「母親に愛されなかった子」として見たりすると色々と変わってくるかもしれません。しかし残念ながら彼が流れ星に何を願ったのか考え込むほどに主人公に感情移入できませんでした。



 さらっと見られて疲れないのは『フリア』ですが、 どちらか片方見るならオチの段数が多い『ロスト・メモリー』のほうをお勧めします。






  

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